あなたは彼岸花と聞いて、どんなイメージをお持ちでしょうか?
彼岸花の大輪の真っ赤な花は、大変美しくどこか妖しい魅力にあふれています。
地面から長く伸びた葉のない茎が、まるでろくろ首のようで何となく恐ろしいような雰囲気がありますね。
群生している景色は、鮮やかな真っ赤で華やかな花ですが、なぜか不吉な暗い怖い雰囲気が付きまといますね。
彼岸花のおどろおどろしいイメージは、単なる都市伝説なのでしょうか?
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目次
彼岸花の名前について
彼岸花は、秋のお彼岸の時期(9月の中旬~下旬)に咲くことから、その名をつけられたとされています。
お彼岸の時期は、あの世とこの世が最も通じやすいと言われていますから、彼岸花というう名前自体が「あの世」や「死」を連想させるのかもしれませんね。
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彼岸花の別名
彼岸花はとても別名が多くあり、1,000以上もあると言われています。
そのほとんどが暗くネガティブで不吉な別名であることから、より縁起が悪いイメージになっているのかもしれませんね。
別名には、死人花(しびとばな)、捨て子花(すてごばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)、蛇花(へびのはな)、剃刀花(かみそりばな)、狐花(きつねばな)などがあります。
聞いただけで少しゾッとしてしまいますね。
しかしながら全く反対に縁起が良い別名もあります。
彼岸花は、曼珠沙華(まんじゅしゃげ・まんじゅしゃか)ともいわれますね。
曼珠沙華は仏教で伝説上の天の花の事で、サンスクリット語で天界に咲く花という意味です。
見る者の悪業を払うといわれ,天人が雨のように降らすと言われています。
おめでたい事が起こる兆しに赤い花が天から降ってくる、という仏教の経典から来ています。
曼珠沙華(まんじゅしゃか)という歌を、引退された山口百恵さんが歌われていたのをご存知の方も多いでしょう。
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彼岸花の毒について
彼岸花は全草有毒(ぜんそうゆうどく)といって、花、葉、茎、球根、全ての部分に毒があります。
特に球根の中にはリコリンという有毒成分が入っています。
誤って口にすると、激しい下痢や嘔吐に見舞われ、ひどくなると呼吸不全や痙攣などを引き起こすと言われています。
よほど大量に食べなければこのような深刻な症状にはならないようですが、小さなお子さんや犬の散歩中など、誤って口に入れない様に注意してくださいね。
毒があるので「毒花(どくばな)」「痺れ花(しびればな)」などとも呼ばれています。
彼岸花を食べたら「彼岸(死)」しかない、という意味でも彼岸花と呼ばれたようです。
ネズミなどの小さな動物の場合は球根1個で、1500匹分の致死量になるそうです。
彼岸花の毒の有効利用
彼岸花はその毒性を活かし、モグラやネズミから田畑の作物を守り侵入を防ぐ為に、田んぼの畦道に植えられました。
彼岸花の根の張りがとても強いため、畦道を強くする目的でも植えられたそうです。
また墓場に彼岸花が多いのもこの毒性を利用していました。
埋葬方法が土葬の時代には、遺体を動物から守るために毒のある彼岸花がお墓の周りに植えられたそうです。
ですが、一般的に触っただけで毒の症状は出ませんのでご安心下さい。
うっかり口から摂取した場合には危険ですから、そのまま食べないで下さいね。
彼岸花は昔非常食でもありました
「そのまま」でなければ大丈夫なのでしょうか?
実は彼岸花は、でんぷんを多く含んでいるため食用可能です。
毒は水にさらすと抜けるため、昔は流水で数日間さらし飢餓で苦しい時に毒抜きをして食用にすることもあったそうです。
畦道に彼岸花が多いのは、ネズミやモグラ対策だけでなく、飢饉に備えて非常食用に植えたという説もあります。
彼岸花の不思議な成育サイクル
彼岸花は、秋雨が降ってやがてお彼岸という頃になると芽を出し、1日に10センチ近くも茎が伸びて、あっという間に50センチ位になり、妖艶な真っ赤な花を咲かせます。
彼岸花の大きな特徴は、「葉見ず花見ず」といわれるように、花と葉が全く別の時期に出ることです。
あまりこのような花はない様に思います。
花が満開で咲き誇っている時期には、葉が全くないというう風変わりな花です。
大抵の花は、花の時期には葉もありますが、彼岸花はありません。
これだけで神秘的で、より怪しさを増しているように思います。
花が咲いた後に葉っぱが伸び、秋に咲き春に枯れるという通常の植物とは真逆の生態を持つ珍しい植物です。
1週間ほどで花も茎も枯れてしまい、今度は球根から緑の葉っぱがどんどんと伸びてくるのです。
冬には青々とした美しい葉が茂ったまま越冬し、夏は休眠期に入り枯れてしまいます。
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園芸品種としての彼岸花
彼岸花は、学名でリコリス・ラディアータと言います。
園芸品種は彼岸花ではなく「リコリス」と呼ばれ、最近では家庭で植えて栽培する人も増えてきました。
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「リコリス」はギリシャ神話の海の女神の名前に由来するそうです。
名前の響きが大変可愛らしくお洒落で、不吉なイメージを払拭していますね。
本来花の形など他を圧倒する美しさと華麗さですから、群生させると大変見ごたえがあります。
まるで打ち上げ花火が上がったように長いおしべとめしべが特徴的で、華やかに咲きます。
園芸品種の花色は赤、白、黄、オレンジ、ピンク、紫と豊富で、光沢のある花弁が美しいです。
白は清純、ピンクは可憐、黄色は華やか、と花の少なくなる秋にお庭を彩ります。
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夏に球根を植え付けます。あまり環境も選びません。
田んぼの畦道で繁殖するくらいとても強く、多年草ですから一度植えたら手間がかかりません。
古くに中国からはいり日本各地に自生していますから、気候にも合い丈夫で育てやすい為初心者の方にもおすすめです。
まとめ
彼岸花は本来全く不吉な花ではありません!
しかし毒があることから、簡単に食べてしまわない様に、近付かない様にわざわざ不吉な別名をつけたのではないでしょうか。
古くからの言い伝えで「家に持って入ってはダメ」「触ると手が腐る」などと言われきたので、怖いイメージが付いたようです。
彼岸花の毒は田畑やお墓を守るため、大変有益に使われていました。
人間の生活に役立っていたのですね。
最近では群生した彼岸花を見る観光名所も沢山あります。
秋の風物詩の一つとして、彼岸花を楽しんで下さいね!